@ 山東地域における西方様式受容に関する研究ーー南北朝期の石仏を中心に一本研究では、同時代において特に目立つイタリア・・ルネサンスをめぐる言説を中心に調査・考察する予定だが、この時期にはフランス、ドイツ、フランドルなどの北方ルネサンスに対する関心も高まっている。将来的には、北方ルネサンスをめぐる言説をも詳細に調査・整理し、第二次大戦前後の日本におけるルネサンス・ブームの位置付けをより明確にしていきたいと考えている。最終的には、文献資料のみならず実作にあらわれたルネサンス美術の影響なども含めて考察し、ルネサンス・ブームが日本における西洋美術受容、美術史学あるいは美術批評におよぼした影響、意義を提示したいと思う。また、美術界におけるルネサンス・ブームを検証していくことで、美術だけにとどまらない同時代の文化状況をも見直すきっかけとなるはずである。研究者:早稲田大学会津八ー記念博物館助手村松哲文山東省(半島)がいわゆる南海ルートの重要な地域であったことは文献上証明することができる。一方、中国が日本や朝鮮と交流する際にも山東省がターミナルとなっていたことも見逃すことのできない史実である。それゆえ、この地域の仏像の研究は、単に山東地域の仏像における西方的な要素の伝播経路の解明にとどまらず、日本や朝鮮における古代仏教彫刻史の研究にも貢献するものと考えられる。また中国における海路交通の解明は、従来の陸路(シルクロード)による文化の伝播という概念を再構築するもので、美術史のみならず、東洋史や仏教史の分野にも大きな意義をもつものである。中国の仏教彫刻の中には、いわゆる伝統的な漢民族的な仏像と西方的な影響を受けた仏像とに分けられるとされてきた。ところが、その西方的な影響を受けたといわれる仏像が如何なる状況下で造像されたのかという詳細な研究は少ない。特に山東省という都から離れた地方の仏像については、そうした考察が全く進められていなかったのが実情である。中国という広大な領土の中のー地方の仏像研究であるが、先述の様な実は非常に重要な地点であることが分かりつつあることから、今後、中国仏教彫刻史研究の重要な分野を築く価値ある調査・研究であると信じている。申請者は、山東地域の仏像の他に、未調査の仏像、特に町の管理所や文物管理所等に収蔵されている仏像も、現地の知己の先生に紹介状を書いていただきながら精力的-67-
元のページ ../index.html#93