鹿島美術研究 年報第20号
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⑫ 「君主の寝室」一―-15、16世紀イタリアの宮廷における政治メディア研究ー一のM.エクイコラ、P.チェレザーラ、G.B.フィエラ等である。図像分析の際には、彼に調査したいと考えている。そして、多くの詳細なデータを作成し解析したい。これにより山東地域には、陸路による文化伝播の他、海路(インド・東南アジア・山東)あるいは陸路十海路(インド・東南アジア・南朝・山東)という幾通りかの文化伝播の経路が存在していたと証明されるはずである。研究者:千葉大学大学院社会文化科学研究科博士課程望月由美子本調査研究の意義は、従来の美術史研究のなかで殆ど取り上げられることの無かった「君主の寝室」という政治空間に焦点を当て、その特質と意味についてはじめて文化史的に明らかにしようとする点にある。そこで、先に述べたフエデリーコニ世の寝室の三作例を比較分析し、「君主の寝室」のイコノグラフィーなるものとその意味について考察する。このとき制作背景にあるフェデリーコを取り巻く北イタリアの政治状況や、彼の正妻となるビザンティン皇帝の末裔マルゲリータ・パレオロゴとの結婚など、当時の歴史的文脈から図像プログラムの共通項と差異項を検証し、その構想の立て方、プログラミングの特徴から、「君主の寝室」が如何なる政治的文化的役割を果たし、どのように考案されたのかという問題について試論を提示していきたい。また、本研究では、室内装飾の諸特徴の検証だけに終わらず、建築類型学の側面にも目を向けて、宮殿内の如何なる場所に配置構成され、如何なる室内空間構成を形成しているのかについて検証し、権力表象となる建築メデイアの仕立てられ方、その特徴について明らかにしたいと考えている。調査の中で中心に取り上げていくのは、フエデリーコの寝室であるが、より通時的・共時的なテーマとして広げていくために、先行作例であるウルビーノ公爵の寝室、フエデリーコの曾祖父ルドヴィーコニ世の寝室、ゴンザーガ家の傍系サッビオネータの公爵の寝室も比較対照として調査したいと考えている。さらに「君主の寝室」制作をはじめとするフエデリーコの文化事業を考察するに当たって、重要なファクターとなってくるのが、その文化事業推進の主要メンバーとなるラファエッロの高弟ジュリオ・ロマーノ、宮廷サークルの人文主義者で図像考案者らが構想した君主制の理念、ゴンザーガ家支配の正統性神話との関連性からも考察を_ 68 -

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