鹿島美術研究 年報第20号
99/116

⑰ 中国耀州窯と磁州窯の相互作用研究者:大阪市立東洋陶磁美術館学芸課長出川哲朗これまで耀州窯の発掘調査は、耀J‘11窯自体の全貌を明らかにすることに全力が注がれ、その努力によって、中国国内有数の発掘報告書が次々と刊行された。中国で最も研究が進んでいる窯である。現在も精力的に発掘調査が引き続きなされている。これまでの発掘成果をもとに、青磁窯の耀州窯の独創性と類縁性を他の諸窯と比較検討すべき時期が到来しつつある。越州窯との比較、汝窯への展開の可能性、あるいは耀1+1窯と柴窯の関連性など、今後解明されるべき課題は、多くある。今回の調査では、宋代の有力な窯系である耀州窯と磁州窯系との関連について明らかにしたい。耀州窯の三彩と河南省出土の三彩の比較検討。唐代の白化粧の上に透明な灰釉をかけたものを、耀州窯と磁1+1窯とで比較し、二つの窯系の成立過程に於ける相互作用を調査する。このことによって、耀州窯が独特の青磁窯として発展していく様相が明らかとなるであろう。耀州窯の起源については、越州窯との影響関係は今後是非明らかにされるべき問題であるが、近隣の窯である磁州窯とどのような相互作用が生じていたのかは全く研究されて来なかった。華北での耀州窯系の動きが明らかになれば、河南省において、今後は耀J11窯が、汝窯の成立にどのように関与していったのか、そのダイナミックな流れが分かるかもしれない。更に鉤窯系の窯についても、成立の実体が明らかになれば、鉤窯系と耀J‘|1窯系の動きの中から、最終目標として、官窯青磁の成立過程を解明する一つの手がかりが得られるかもしれない。⑱ 藤岡作太郎研究ー一『近世絵画史』と明治三十年代の日本美術史ー一一研究者:元米子市美術館非常勤職員、東京芸術大学大学院修了藤岡作太郎に関する研究は、これまで国文学史あるいは近代文学史の文脈においてのみ行われてきた。このため名著『近世絵画史』(明治36年、金港堂刊)の史的価値が早くから認められていたにもかかわらず、従来の著作目録や年譜では美術史分野の業績について遺漏が多く、美術史家や画家との交友関係についても見過ごされてきた。村角紀子-73-

元のページ  ../index.html#99

このブックを見る