鹿島美術研究 年報第21号
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⑲ 中国の如来1奇坐像に関する調査研究なお、各時期における、三つの朝鮮イメージは、それぞれの政治状況において、固有の能動的機能ー一竹瑶むの仲介者や鑑賞者が将来においてどのような行動を行うべきかについての情報を伝達し、彼らに働きかけて何らかの行為を行わせようと意図する機能ー一を果たしたのではないかということを提示した。研究者:青山学院大学文学研究科博士後期課程萩原本研究は、中国の如来椅坐像について、西安市とその周辺地域の小石窟群や博物館、文物管理所および洛陽龍門石窟に現存する作例の現地調査を行うとともに、申請者がすでに実施した、中国各地の石窟寺院や単独石像の調査によって収集した調書や写真などの資料に基づき、構築を進めている如来椅坐像のデータベースを活用し、個々の作例の造形様式や図像、銘文、関連する文献資料等を詳細に検討することにより、①如来椅坐像が中国において、初唐期に弥勒仏の図像として定着するにいたった過程と要因、②その中国各地への普及の過程における変容の様相、③その日本への伝来と受容の具体的様相、さらには媒体となった思想、教学の有無等について、仏教史研究や日唐交渉史研究等の成果も踏まえながら、改めて総合的に考察しようとするものである。こうした一連の作業を通じて、中国の如来椅坐像の諸相を理解し、改めて古代日本の如来椅坐像についての検討を進めるとき、個々の作例が中国からもたらされたどのような造形様式や図像、あるいは思想、教学に基づいて製作されたのか、そこにはどの程度我が国独自の展開が認められるかを、より明瞭に把握することが可能となり、ひいては、時代や地域ごとに多様な広がりを見せる中国仏教文化の影響のもとで、どのような思想、文物を選択受容し、我が国が独自の仏教文化を創造するにいたったのかという問題の一端を解明できるものと考えている。哉-77-

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