鹿島美術研究 年報第21号
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場その「配置(dispositione)」にあると語っているが、プッサンは、題材としての物語そのものよりも、視覚上の比喩的表現によって新しいテーマを創り出すことに関心を持っていた。彼は、テーマに相応しい古代美術を的確に選択し、それらをその絵画的比喩とも呼べる手法に利用したのである。この古代美術を利用した絵画的比喩という手法こそ、プッサンの古代受容の特徴であり、この手法は、プッサンの最初の理解者だった詩人マリーノ(GiambattistaMarino)の詩法と密接に結び付いている。実際、本作品においてプッサンは、付随的なモチーフをマリーノの作品に対応して選択し、マリーノの用いる比喩を利用して、新しいテーマを作品に与えているのである。マリーノは、その書簡から確認できるように、古代の作品の断片を新しい意味の結び付きに再構成することを若い詩人達に勧めている。プッサンは絵画においてそれを実践したと言えよう。(2) 東京美術講演会本年度の東京美術講演会は『大王の道・かたちの旅』を総合テーマとして、有賀祥隆東北大学大学院文学研究科教授の司会により、以下の通り実施された。日時:2003年9月18日所:鹿島建設KIビル大会議室出席者:約170名講演:①「西方彫刻における聖と俗」なお、この美術講演会の詳細は、後日、2003年度「東京美術講演会講演録」として刊行される。(3)美術講演会講演録刊行「設立20周年記念美術講演会ーカラヴァッジョの〈マタイの召命〉」(4)第8回鹿島彫刻コンクール協賛② 「インド・ガンダーラから日本へ」-21 -2002年11月13日鹿島建設Klビル大会議室兵庫県立美術館長新潟県立近代美術館長水野敬三郎木村重信

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