鹿島美術研究 年報第21号
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⑫ 「人形芸術運動」研究の誕生」(日本人形玩具学会誌)「かたち•あそび」第3号1993年)がある。ただし、を調査研究することで、奉公隊が生み出された背景や女性がグループで活動することの意味について考察してみたい。本研究の意義は、術家の活動そのものを実証する点である。第二に、のちに奉公隊の主要メンバーとなった者が多く参加しているこれらの団体の発生と活動を考察することで、同隊結成との関連や隊内におけるメンバー間の力関係が明確になる点である。第三に、各種美術雑誌における団体への言説をひろうことで、男性中心の当時の美術界において「女流」がいかなる視点から評価され、女性だけのグループを作ることにどのような意味があったのかが明らかになる点である。本研究において、ジェンダーの視点を取り入れることで、近代日本美術史に新たな側面を導入し、その読み直しを目指したい。研究者.・早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程早稲田大学會津八ー記念博物館助手昭和初期のいわゆる「人形芸術運動」とは、人形作家の地位向上を目指すところから始まり、昭和11年の改組帝展(第4部)に6点の作品を入選させるに至ってひとつの頂点に達した一連の動きを指す。これについてまとめたものとしては、まず、運動の指導者であった山田徳兵衛や西澤笛畝らが日本人形史に関する通史的な著作の中で触れたものがある。また近年では、是澤博昭「人形とナショナリズム(一)人形芸術これらはいずれも、主に運動の経過を問題としたものである。当時の言説についての検討はさておいて、実際の作品についてその造形的な完成度や特質を問題とする、という意味においての、美術史的な考察についてはほとんど行われていない、というのが現状である。「人形芸術運動」とひとくくりに呼びならわしているが、作家たちの依拠するところや造形的な指向はひとつではなく、個々の作品についてこれをみれば、まさに千差万別である。いいかえれば、人形芸術運動という枠組みの中に、すでに多種多様な美・美術史上の問題が詰め込まれている。試みに列挙すれば、素材の多様性、オリジに、これまでの美術史において記述されてこなかった女性美沓沢耕介-41 -

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