鹿島美術研究 年報第21号
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⑳ 18世紀フランス風景画へのヨーロッパ諸国の影響研究者:京都大学大学院文学研究科博士課程そもそも18世紀フランスの風景画に関して包括的に研究すること自体が重要である。確かに、近年Roger(1997)を初めとして、風景画に関する著作は出版されてきているものの、やはり不十分である。18世紀前半のロココの装飾的な風景画から19世紀の写実的風景画、ロマン主義風景画へといかに展開していくのか?そこには連続性が認められるのか、あるいは断絶を強調すべきなのか?この基本的な問題に解答がでていないからである。この問題に答えるに足る情報を我々は18世紀の風景画について持っているだろうか。恐らく否である。また、フランス国内のみに目を向けていては不十分である。ヨーロッパ諸国とフランスとの国際交流を研究することで、風景画の展開をより広い視点から俯鰍することが必要なのである。何よりも風景画研究の空隙を埋めることが本研究の眼目である。それに加え、ヨーロッパ諸国からフランス風景画への影響に関して、情報を集積しておくことは、のちの風景画研究にとって有益な作業となるであろう。18世紀にとどまらず、19世紀絵画研究にとっても意味のあるものとなるはずである。申請者の研究歴からして、どうしてもフランス中心の研究となるが、根本的にぱ汎ヨーロッパ的な風景画の展開の把握を目指している。18世紀フランス絵画研究はどうしても自国内の展開に集中しがちである。その理由は、フランスにおいて王立アカデミーが絵画制作を支配していたこと、フランスの文化的優位が(特に世紀前半について)自明のこととされていたことの2つに集約されるであろう。しかし、18世紀の風景画は、諸国の芸術家・著作家たちにとって、知的交流の場となっていたと思われる。ゆえに本研究は風景画史に寄与するとともに、既存のフランス絵画像に一石を投じることができるのではないか、と期待される。⑮ 明治期国学者による美術論ー一馬し川真頼・小杉椙祁を中心に一ー・研究者:茨城県近代美術館学芸員吉田衣里本研究の意義は、明治前期を近代への移行期として捉え、江戸と明治の継続性を明-52 _ 田朋子

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