持ち、イッテンの芸術観にどのような影響を及ぼしたのかについて、実際の日記や作品をもとに解明したい。また、イッテンは古代から近現代に至るまでの巨匠の作品の線や形、構図、色彩などを詳しく分析していたが、彼が探究していたあらゆる時代の芸術に共通する根本原理とはどのようなものであったのか。イッテンは本来画家であり、シュトットガルト美術アカデミーでヘルツェルから影響を受けていた。イッテンの芸術は表現主義的といわれながらも、そこにはキュビズム的な作品や幾何学的な表現など様々な作品が見られ、色彩は重要な位置を占めている。彼のコントラスト(対比)の理論は、色彩においては色相・明暗・寒暖・補色・同時・彩度・面積という7つの対比を樽き出しており、これらの対比について改めて検討し、イッテンの色彩論に潜む多くの芸術的連関をもった統合的な思索を明らかにしたい。色彩を中心に彼の芸術観を解明することは、芸術活動を通して知性と精神と肉体の調和を目指していたィッテンの統合性を明らかにしていく上で意義のあることである。この度、2003年から2004年にかけて日本ではじめてイッテンの創作活動と教育活動を総合的に紹介する画期的な展覧会「ヨハネス・イッテン造形芸術への道」が開催され、初公開の資料や日本では初めて公開される色彩構成などの作品も展示されている。これらをもとに色彩に関するイッテンの考え方を再検討し、現地での詳細な調査内容と比較検討することにより、イッテンの色彩における芸術的な思索を探究し、バウハウスの基盤や同時代の芸術的潮流を明らかにしたい。そして時代を超えて現代美術の探求していくべき統合的な方向性を導き出したい。イッテンは制作・理論・教育の統合化を図ろうとしており、バウハウスの統合の意味を究明していく上でも解明する価値がある。本調査研究においては、国内資料およびドイツやスイスにあるイッテンの作品や日記・資料等も含めて丹念に調査・検討することにより、絵画表現に基盤を置きながら、彼の芸術に対する捉え方を明確にし、イッテンの色彩表現とその統合性について明らかにすることを目的とする。66 -
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