(1951年頃)という自身の別作の上に実験的に置いていた。この試みは、一つにはコ―20―発表者:ニューヨーク市立大学ザ・グラデュエイト・センター 美術史学科 博士課程 大 島 徹 也おいてポロックは、マティスの『ジャズ』/切り紙絵およびピカソのコラージュの美学を取り込んで、オールオーヴァーのポード絵画(1947−50年)以後、さらなる新しい展開を図っていたと見られる。ポロックはオールオーヴァーのポード絵画において非形象描写的な絵画を実現する一方で、そのさなかの1948年に、マティスの『ジャズ』/切り紙絵に着想を得た切り抜きの手法の採用によって、新しい種類の成形作用を導入している。《カット・アウト》では、オールオーヴァーに塗られた厚紙の中央が人のような形に切り抜かれており、それはマティスの『ジャズ』の中の《道化師》や《水槽の中で泳ぐ人》を強く想起させる。そしてポロックは1956年の死の時点で、中央が切り抜かれた《カット・アウト》のその厚紙部分を、《黒と白の絵画Ⅱ》ラージュとして捉えられる。他方、その試みは『ジャズ』で用いられているステンシリングの技法ともおそらく関係しており、ポロックはステンシルのごとき切り抜きの部分の下に異なる絵を重ね置くことによって、そこから前者の空白部の形に後者を視覚的に切り取って浮かび上がらせ、間接的に新たな一つの成形作用を生じさせようとしていたと思われる。さらに、下に置かれていた《黒と白の絵画Ⅱ》はそれ自体、ステイニングの技法の採用によって、また別の種類の成形作用を有していた。このようにポロックは晩年、《カット・アウト》において複数の新しい種類の成形作用を組み合わせるという極めて複雑で高度な試みを行っていたのだった。上に示されたように、《カット・アウト》を中心とするポロックのカット・アウ本発表ではジャクソン・ポロック(1912−56年)のカット・アウト・シリーズ(1948−56年)について、マティスの『ジャズ』(1947年)およびこれと密接に関連する切り紙絵、またピカソのコラージュとの関係において新たな解釈を試みる。本発表において考察の中心となるのは、カット・アウト・シリーズの主要作《カット・アウト》(1948−56年頃)である。最終的に未完成に残されたこの作品に「ジャクソン・ポロックのカット・アウト・シリーズ」
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