―59―『天稚彦草子』研究<東アジアにおける釈迦誕生図像の変遷とその影響 ―13−16世紀を中心に―い作業となるであろう。研 究 者:早稲田大学大学院 文学研究科 博士後期課程 大 月 千 冬本調査研究においては、七夕の由来を語る御伽草子『天稚彦草子』諸本の、御伽草子絵巻および奈良絵本作品群における総合的な位置付けを目的とする。室町時代中期から江戸時代中期にかけて制作された御伽草子絵巻・奈良絵本の現存作品は数多く、国文学・歴史学からは常に注目をあつめている。美術史学においても研究成果の可能性をいわれながらも、これまであまり研究はなされていない。御伽草子絵巻・奈良絵本研究が進行していない原因として絵画様式にばらつきがあることや、作品に年記・落款がなく制作年代の特定が難しいことが挙げられる。しかしながら、これら従来ネガティヴな要因と捉えられてきたものは、換言すれば、作品群がヴァリエーションに富み、研究の素材として可能性を秘めていることを示している。また、制作年代の問題も、美術史学の枠組みを越え、国文学・歴史学など他分野領域とのインタラクティヴな研究によって、解明できると申請者は考え、研究の価値を見出すものである。本調査研究の構想は以下の通りである。御伽草子絵巻・奈良絵本全体は未解明の要素が大きく残っている。申請者の研究は、同一題材諸本の関係を明確にすることである。『天稚彦草子』に関するここ数年間の研究において、ある程度の成果があった。また国文学・歴史学研究者からも評価を受けている。現時点では、数多くある御伽草子絵巻・奈良絵本全体の一題材に過ぎないが、この方法論を継続して成し遂げることが、曖昧であると言われてきた御伽草子絵巻・奈良絵本を取り巻く諸相を解明するために有効であると確信する。研 究 者:寝屋川市史美術建築編 主任調査員 松 田 妙 子美術史学における仏教図像に関する研究は、全アジアを視野に入れ、図像の系統地域間の影響関係、図像変化の要因など、詳細な分析が行われている。仏伝に関する図
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