鹿島美術研究 年報第22号
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―74―パルマ・パラティーナ図書館所蔵ギリシア語福音書写本5番の研究技術レベルも窺い知ることができるだろう。「長崎のレーマン」についての個別の洗い出しを、今回助成申請させていただく本研究において実施し、修士論文とその後の整理を経た横山松三郎と高橋由一の比較研究(「『旧江戸城之図』と横山松三郎」1980年4月『東京国立博物館美術誌 MUSEUM』るかなり早期のものであるが、今回申請いたします研究によって、課題として残っていた部分をおぎない、近代日本の初期段階における油彩画と写真の分岐への考察に、駒を進めるささやかな契機としたい。研 究 者:早稲田大学大学院 文学研究科 博士後期課程  桜 井 夕里子図像学、様式論、図像プログラム、コディコロジー、社会史的視点からの考察等、あらゆる観点から『パルマ福音書』の特質を解明することが、申請者の研究目的である。本研究において導き出された成果は、本写本のみの問題に限定されるものではない。同時代写本、壁画、さらにイコン等への新しいアプローチを確立していくものとなるだろう。図像を比較分類し、その変遷過程を時間軸に沿って辿るという従来の研究方法だけでなく、今日の写本研究はコディコロジーの方法を積極的に取り入れることにより成果を挙げている。パルマ、パラティーナ図書館において、本写本のコディコロジーに関する詳細な調査を行う予定である。製本状況、羊皮紙の種類、絵の具、筆の種類、寸法等を精査検討し、データ収集を行う。また、本写本と関わりを持つロンドン、パリ、ヴァティカン図書館所蔵の中期ビザンティン写本の現地調査も並行して行う。最終的に、本研究がビザンティン写本挿絵についての体系的な研究の一助となることが目標である。No.349p. 21−p. 31所収)に重ね合わせてみたい。この論文は、私の研究履歴におけ

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