鹿島美術研究 年報第22号
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―78―I五姓田義松の滞欧米期の活動についてJストラスブール大聖堂西正面扉口周辺の図像プログラムに関する考察かを考察したい。最後に、古い文献や言伝えを見直し、様々な作品を対照し、国内外の専門家と協力しながら、この研究を押し広げて方法論を強化し、平安、鎌倉時代の芸術と星信仰についての資料目録、図録を作成したいと考えている。研 究 者:横浜美術館 学芸部 主任学芸員  柏 木 智 雄五姓田義松研究は、日本近代美術研究の先覚者である隈元謙次郎氏の実証的な研究を端緒に、版画家にして近代日本美術の研究者でもあった西田武雄(半峰/1894−1961)による五姓田義松関係の文書史料の断片的な紹介、青木茂氏による西田旧蔵の五姓田関係文書の翻刻・刊行、神奈川県立博物館(現・神奈川県立歴史博物館)による五姓田義松の大規模な回顧展の開催と資料編の充実した図録の刊行など、五姓田義松のモノグラフはこれまで、少しずつ厚みを増してきたが、同展が開催されてから20年足らずを経た今現在、その後大きな進展を見せていない。その理由のひとつとして、西洋留学から帰国した後、画業が衰頽の一途を辿ったことが挙げられる。本研究では、義松の画業の転換期となった西洋留学期について、特に人的交流の実態と模写に着目して、その活動の一斑を現地調査によった明らかにし、義松が西洋体験によって身体化しえたことと、日本の画壇を不在にしたことによって血肉化し得なかったことを併せて検証して、近代日本洋画史における五姓田義松の位置づけを再検討することを目的とする。こうした着眼による義松研究は、先行研究にも見られず、近代における西洋留学第一世代に属する画家の活動を明らかにする研究に具体的な実例を提供するものである。研 究 者:名古屋大学大学院 文学研究科 博士後期課程  小 林 久見子申請者の研究対象は、フランスの代表的なゴシック建築のひとつ、ストラスブール大聖堂の西正面扉口、およびその周辺を飾る彫刻群の図像である。ゴシック期、西欧諸国における聖堂の西正面に配される図像の種類は、マリア崇拝の隆盛などを背景に

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