―77―本研究の意義は、以上のような比較的視点から日本の「書物」モティーフに着目し、その成立過程と展開様相を明確にするところにある。特にジェンダーという視点を入れて「書物」モティーフを手がかりに文化空間を再生する点は美術と生活の関わりを具体化し、日本的な伝統を継承していく過程を再構成する。具体的には申請者がこれまで研究してきた服飾における「文学的意匠」を諸ジャンルと有機的に関連づけようと試みながら、「文学」がその精神性でもって認識されたのではなく、ひたすら審美的な対象として好まれたことを論じる。本研究の価値としては「書物」モティーフが日韓の比較文化における斬新な切り口を提供し文化理解へとさらなる発展が期待されるところである。
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