―64―A8世紀における仏像と荘厳具との関係についてことはできないと考えられている。これに対して、本研究では、複数の作品間における部分的イメージの反復に気付くことによって、コラージュがより複合的に読み解かれる可能性を持つことに着目する。つまり、エルンストのコラージュが個々に解釈されるよりも、コラージュという一つの技法に支えられた作品群を包括的に捉えることが求められていることを明確にし、作品を解釈する上で、技法そのもののプロセスの重要性を再認識する必要があることを改めて提言することに意義がある。主題として取り上げる『百頭女』を含め、エルンストが1934年にかけて発表した3つのコラージュ小説は、物語を構成するコラージュの作品数の多さと複雑さから、先行研究においては彼の膨大なコラージュ作品の一部として概観的に取り上げられるか、シュルレアリスムの驚異的小説として文学の分野で僅かに取り上げられるくらいで、詳細なイメージ分析がほとんどされてこなかった。しかし、これらはエルンストがシュルレアリスムの理論に触発されつつ発見したフロッタージュの応用的作品の制作に数年間集中した後のコラージュ回帰であり、彼の絵画の原点としてコラージュを見つめ直し、その全体を把握するためには最初の小説『百頭女』に対する緻密なイメージ分析と内容からの考察が不可欠である。また、当初キャプションなしで発表される予定であった『百頭女』が、ブルトンの要求によってキャプション付きになった事実や、最後のコラージュ小説『慈善週間または七大元素』がキャプションなしの形態をとることから、言葉とイメージの関係、ひいてはシュルレアリスムの文学と絵画の関係を考慮しながらエルンストのコラージュ回帰の意義を捉えていきたい。研 究 者:早稲田大学 文学学術院 助手 小 林 裕 子井上一稔氏は『西大寺資財流記帳』記載の像高・台座高・光背高の各々に対する比率を算出した。井上氏がこうした算出をしたのは光背や台座が像身に対して何らかの比率をもって制作されたとの推測に基づくと考えられるが、『資財流記帳』の数値はどこからどこまで計測したかが不明なのである。井上氏が推測された像高と荘厳具との比率は、材料の調達や仏像を安置する建築内部空間との兼ね合いから実際に存在していたと考えられる。つまり像高と荘厳具との関係を明らかに出来れば、8世紀官営造仏所の制作工程の一端の解明につながることになるのである。
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