―65―Bドヴァーラヴァティー時代の法輪図像そこで私は最近発表した論文で、わが国8世紀に制作された立像の光背高が像高の4分の1をプラスした高さであることを指摘した。またこの比率は8世紀前後の時代の作例にはおおよそあてはまらないことから、8世紀の作例特有の比率である可能性が高い。今後、8世紀の現存作例はバラエティに富んでいるが、立像の像高と光背高以外にも台座や他荘厳具あるいは坐像に範囲を広げてデータを検証することができれば、8世紀の官営造仏所の仏像制作過程や制作活動のより明確な理解につながるのである。このような比率つまり共通規範が生まれた理由は、前述のような材料の調達、建築内部空間との兼ね合い、あるいは単なる美の基準によるのか、また他の理由なのかは現状では決めかねるが、8世紀初頭に制作された中国唐代の作例にも同様の比率があてはまる以上、わが国独自に生み出されたとは考えにくい。したがって、唐代あるいは統一新羅の作例をも視野に入れて仏像と荘厳具との関係を精査できれば、中国における仏像制作の背景やこれをわが国にもたらした伝播の様相をうかがい知ることになり、先にあげた共通規範の生まれた事情をも明らかになろう。さらに、これまで数値を算出する際に入手不能のデータは、PCにとりこんだ写真に画像処理を施し、求めたい箇所の法量を計測してきた。私の用いた方法では誤差は実測値のほぼ5%以下とみられるが、実測によらない数値を用いるためには様々な条件で計測を繰り返して精度をあげなくてはならないし画像処理も複雑である。そこで出来る限り実測値を集めて画像計測との誤差を確認しながら研究を進めているものの実測にまさる数値はないので、本研究では事情の許す限り調査を実施する所存であるが、それでも調査がかなわないケースが多々あろうから、光学機器や画像処理の専門家の意見を取り入れて計測の精度をあげて進めていきたい。―パナッサボーディーに乗る三尊像の成立と展開―研 究 者:九州国立博物館 研究員 原 田 あゆみ仏教美術において図像の成立と展開は重要な位置を占める。日本では、美術史研究において東アジアと南アジアを結ぶ研究は豊富に存在するが、東南アジアの美術史・図像研究への展開は今まで非常に限られたものしかなかった。
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