―67―D彫刻家オーギュスト・ロダンの作品における石膏技法の多様性期のグラフ・ジャーナリズムにあって、両者の役割を考察する一つの機会ともなるだろう。・構想この研究は2008年以降も継続し、大正から昭和時代における満谷国四郎の業績を検証する予定である。研究にあたっては、明治期を取り上げる2007年度と同じく、作品に関する情報の収集に努めながら、各時代における満谷の作品がもつ興味深い問題、つまり画面の装飾性についての問題、人体の把握に関する問題、アジア地域の風物を題材とすることに関する問題が取り上げられることになると考える。この一連の研究により、満谷に関する作品目録の編纂への道が開けるとともに、近代の日本における油彩画がもつ様々な問題群にアプローチしていくことが可能になると考えている。研 究 者:東北芸術工科大学 芸術学部 教授 藤 原 徹ロダンが残した膨大な石膏像は、実際に鋳造作業に使われたものもあり、鋳造されなかったものもある。これらは、鋳造過程における原型という限定的な意味を超えて、構想(アイディア)の原型と呼べるものであろう。酷似した石膏像を時をおいて何度も制作したり、手足などの部分を交換して多数のバリアントを制作したり、本来は無関係な複数の石膏原型を結合させて新たな像とするなど、ロダンは興味深い制作方法をとっている。つまり、あるひとつのモティーフについて、「ロダンのオリジナル」としてさまざまなバージョンの石膏原型があるのだが、申請者は、石膏像修復の経験を積んできた修復家の視点から、その型取り技法の多様性に関心をもった。ロダンの石膏技法の多様性を詳らかにすることは、ロダンの作品の成立を辿る上で重要な意味をもっている。ロダンの彫刻は、助手達の分業によって制作されていたと言われてきたが、石膏技法を分析することによって、部分的ではあるものの工房内の技術体系を解明することができると思われる。従来のモティーフからの分析ばかりではなく、技術的視点によって原型の新たな系統的分類が可能となり、石膏像研究の幅が広がるものと思われる。また、その技術を
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