―74―F近代におけるイタリア・ルネサンス美術の再評価と日本の美術史家〔構想〕申請者の研究構想の全体像は、中国民衆版画研究を軸としながら、それを東意味・機能を明確化し、検証することができる。文化面での国際理解・融和がとりわけ重要な時代にあって、相互理解と共生社会の構築に積極的な意味を持つ本研究の意義は大きい。また、日常の生活文化における美術の効用と活用法について知見をもたらすものであり、社会的還元が望まれる。アジア漢字文化圏の広がりの中で捉え、ひいては、居住空間に配される画と人との関わりを考究しようとするものである。具体的には、東アジアにおける民衆(版)画の空間・儀礼との関わり、および図像学的比較を通じて、画の普遍的機能とともに各文化の特性を読み取ることを目指している。現段階では、画が本来的に有している呪術性=作用性や、あるいはカタチを通じた関係性の構築という側面について、明らかにしたいと考えている。また、図像の比較検討を通じて、東アジアにおける文化の相互交渉と関係性の一端が明らかとなるであろう。文化間の相互理解と交流促進につながるものとしたい。今回の申請研究については、上記のような研究構想の一端を担うものとして、とりわけ先行研究の手薄な沖縄・ベトナムの事例について、その概要把握と基礎的資料の収集・整理、公開を第一段階の目的とする。その上で、新たな資料の発掘と聞きとり調査による実態・風俗調査を両輪として進めながら、特に実地調査で得られた新たな知見や資料を糧に、代表的図像例の具体的な比較考察を通じて、上記目標の達成を目指す。研 究 者:広島女学院大学 生活科学部 教授 末 永 航矢代幸雄がロンドンで1925年に出版した英文の著書『ボッティチェッリ』は、日本人によるはじめての西洋美術研究への寄与として今日でも比較的よく知られている。しかし刊行当時はロジャー・フライに酷評され、現在も研究史上、さほど重要な位置を与えられているとはいえない。どのような事情でこの豪華本の刊行が実現し、それが矢代の師ベレンソン、その協力者デュヴィーン、フライやその友人の研究家ホーンらブルームズベリー・グループ周辺の人々など、当時のイギリスを中心とする文化人たちの間でどのような意味を持
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