―75―つものだったのだろうか。こうした問いに答えることができる人はもはや存命せず、それを明らかにする研究は未だ行われていない。19世紀末から20世紀はじめにかけて大きな動きになっていったイタリア・ルネサンスの再評価の中で日本人が果たした役割を、矢代の著書についてなるべく正確に浮き彫りにすることで、黎明期の美術史学のもっていた社会的特性が明らかにすることができると考える。またあわせてピエロ・デッラ・フランチェスカ再発見など新しい美術史学の成果をいちはやく受容していた日本の知識人たちと美術史家についてもそれぞれの役割を明らかにしていきたい。
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