鹿島美術研究 年報第25号
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―15―② 2007年助成金贈呈式③ 研究発表会研究発表者の発表要旨的な機能から離れ、個人の邸宅の庭園の装飾、建築の持ち送りを支える柱、家具の一部に取り入れられ、装飾的、実用的機能が優先され、ひいてはローマ人のギリシア趣味の指標とされていく過程を明らかにする。一方、本来の宗教性はジェムなど貴重な石に彫られた小型のタイプとして、厄除けのお守りのような機能へと継承されたとした。芳賀氏の結論からは、新古典主義建築における古代のオーダーに適合した装飾としてのマント式ヘルマ柱の復権に関する更なる研究も期待でき、よって鹿島美術財団賞にふさわしい優れた成果であると判断される。優秀者の諸星妙氏は、ベラスケスの《セビーリャの水売り》などのボデゴン画にセビーリャの知的文化的環境を反映した象徴的な意味を読み込み、新たな研究の可能性を切り開いたことが評価されます。2007年(2006年度)助成金贈呈式は、第14回鹿島美術財団賞授賞式に引き続いて行われ、選考委員を代表して、高階秀爾・大原美術館長から、2007年1月12日開催の助成者選考委員会における選考経過について説明があった後、原常務理事より助成金が贈呈された。本年度の研究発表会は5月11日鹿島KIビル大会議室において第14回鹿島美術財団授賞式ならびに2007年「美術に関する調査研究」助成者への助成金贈呈式に引き続いて、財団賞受賞者とそれに次ぐ優秀者である計5名の研究者により次の要旨の発表が行われた。1.十七世紀日本絵画における中国像―狩野山雪の場合―発表者:東京大学 東洋文化研究所 准教授 板 倉 聖 哲十七世紀日本の狩野派を中心とした絵画鑑賞界では、文献・画像の双方から得た知識から明末に至る中国画の展開をある程度正確に通観出来たことは現存作品から窺え(文責:小佐野重利委員)

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