鹿島美術研究 年報第25号
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―31―研 究 者:大阪大学大学院 文学研究科 博士後期課程  萬 屋 健 司デンマーク美術は、17世紀までさかのぼる歴史をもつ王立芸術アカデミーを中心に、19世紀前半には黄金期を迎えた。また20世紀には建築、工業デザインの分野で優れた芸術家を多く輩出し、「デーニッシュ・デザイン」は今日、世界的に高く評価されている。しかし、豊かな芸術的伝統を持つ北欧の小国に関する研究は、我が国においてはほとんど進められていないのが現状である。デンマーク美術を専門とする研究者が不在である中で、本研究は日本における最初のデンマーク美術研究として位置づけられる。また、ハマスホイを通して我が国のデンマーク、ひいては北欧美術に対する理解を深める端緒となる本研究の意義とその価値はきわめて大きい。北欧地域研究には美術史の視点を、そして西洋美術史研究にはデンマーク美術の視点を提供する本研究は二つの領域に寄与しうる。また、デンマークから見るならば、これまでデンマーク国内に限られてきた研究活動の門扉を開くものでもある。ハマスホイと19世紀デンマーク美術を、デンマーク美術史記述の内部ではなく、広く西洋美術史の流れの中でとらえる視点は外国人である申請者の利点であろう。1981年に開かれた回顧展を契機に再発見されたハマスホイは、1980−90年代を通してヨーロッパとアメリカにおけるデンマーク美術全体の再評価を促した。2008年には我が国で初めての回顧展が国立西洋美術館にて計画されており、ハマスホイとデンマーク美術に対する関心は、今後高まりを見せるであろう。本研究はハマスホイに関する調査研究を通して、美術史という一学問分野に寄与すると同時に、長期的にはデンマーク美術の紹介、普及というより広い文化的意義をも併せ持つものである。研 究 者:京都市立芸術大学 美術学部 准教授  加須屋 明 子旧東欧地域の文化は非常に豊かで、また独自の発展を遂げてきているが、第二次世研究目的の概要① ヴィルヘルム・ハマスホイ研究 ―室内画の展開とその芸術的背景―② 冷戦期ポーランドにおける美術の役割

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