―43―る。また生地フランスでは国立図書館(在パリ)が所蔵する版画作品を中心にジャクレー展を行う計画が浮上している。横浜美術館で展覧会を開催した2003年当時から思い描いていたことが、実際に日本−韓国−ミクロネシア−フランスという順で展開しつつある。2010年以降になるであろうフランスでの展覧会に合わせて、各国の研究者によるポール・ジャクレー国際シンポジウムを開くことができるとよいと考えている。―西欧アヴァンギャルド芸術の受容と新しい広告表現の模索―研 究 者:神戸大学大学院 国際文化学研究科 博士後期課程 竹 内 幸 絵本研究の目的は、日本の商業広告が、20世紀初頭に萌芽した、表現主義、構成主義、未来派、ロシアアヴァンギャルドなどの西欧アヴァンギャルド芸術の表現をいかに取り入れたか、そこにはどういった思慮があったのかを、調査・考察することにある。つまり、大衆に最も近い芸術表現である広告という媒体を通した、西欧芸術の受容についての検討である。商業広告に取り入れられたアヴァンギャルド芸術表現は、これを街角で目にする大衆の美意識(の変化)に直結したと推察できる。一般的な商業広告の表現の変化とアヴァンギャルド芸術表現との関係や、変化がもたらされた背景を詳細に検討する本研究の試みは、日本における近代的な広告誕生の原点の一部を明らかにするとともに、大衆(社会)において現代的な美意識が成立していく過程を明らかにすることができると考える。また、主な資料として調査する雑誌『広告界』は、安価な一般紙であったことから散逸しており、網羅的な現物調査が困難な状況にある。同誌は近代的な広告の黎明期において、表現の変化や制作者の職業意識に対して大きな影響を与えたと認識されているにもかかわらず、その内容についての詳細な研究はほとんど進展していない。一方、杉浦非水が主催したポスター研究誌『アフィッシュ』は、日本初のグラフィック・デザイン研究誌として知られているにもかかわらず、発行部数の少なさから現存資料が少なく、同誌内の掲載記事への検討もまた、未だ詳細にはなされていない。これらの雑誌についての具体的調査の進展は、散逸する運命にある広告の変遷について⑮ 1930年代日本の広告美術の変遷
元のページ ../index.html#60