鹿島美術研究 年報第26号
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―15―② 2008年助成金贈呈式③ 研究発表会研究発表者の発表要旨メージ・ポリティクスだと解読していく論考は刺激に富み、極めて優れた試論となっている。2008年助成金贈呈式は、第15回鹿島美術財団賞授賞式に引き続いて行われ、選考委員を代表して、高階秀爾・大原美術館長から、2008年1月25日開催の助成者選考委員会における選考経過について説明があった後、安富専務理事より助成金が贈呈された。本年度の研究発表会は5月16日鹿島KIビル大会議室において第15回鹿島美術財団授賞式ならびに2008年「美術に関する調査研究」助成者への助成金贈呈式に引き続いて、財団賞受賞者とそれに次ぐ優秀者である計4名の研究者により次の要旨の発表が行われた。1.とり違えられた肖像―足利義持の肖像制作と天空の地蔵菩薩―発表者:早稲田大学 高等研究所 助教 黒 田   智結論をいえば、このとり違えは、義満像と義持像がともに足利義持によって発注されたことに起因する。足利義持の肖像は、義持政権の政治的画期にあたって寿像として制作されていた。これに対して、足利義満の肖像の多くは義満死後につくられた遺室町幕府3代将軍足利義満と4代足利義持の肖像は、江戸初期以来ごく最近にいたるまで、とり違えられてきた。2人の親子は、なぜとり違えられたのだろうか。両像の悉皆的調査・収集と、とり違えを起こした2つの肖像画―神護寺所蔵「足利義持像」(神護寺本)と東京大学史料編纂所所蔵「足利義満・春日社神主大中臣師盛像」(春日本)の分析・読解から、このなぞに迫ってみることにしたい。(文責 大高保二郎委員)

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