―33―⑫ 昭和期における北海道イメージの形成⑬ 大坂四条派の研究―グラフィックデザイナー栗谷川健一の活動を中心として―研 究 者:北海道立帯広美術館 学芸課長 鎌 田 享栗谷川健一(1911〜1999)は、北海道・岩見沢に生まれ、生涯を北海道で過ごした。1972年に開催された冬季オリンピック札幌大会の国際招致ポスターを制作するなど、戦後北海道のグラフィック・デザイン界の中心として活動を繰り広げた。栗谷川のポスターでは、写真画像が用いられることは少なく、極めて絵画的な手法で自ら描いたイラストが、図像の中心をしめた。栗谷川の活動が注目を集めるようになるのは、1950年代から70年代、日本国有鉄道北海道総局およびそのもとにあった札幌・旭川・函館・釧路の各鉄道管理局が発注した観光ポスターの制作によってである。これらのポスターは観光誘致という目的から、北海道の景観や事物を中心に据えたものであった。同時期は、高度経済成長を背景に観光需要が増大した。その一方で、テレビ媒体は普及の過渡期にあたり、このような状況のもと栗谷川が制作したポスターは北海道の視覚イメージの形成と伝播に多大な役割を果たした。本研究ではまず1950年代から70年代にかけての栗谷川の観光ポスターについて、詳細な作品研究を行う。原画制作にあたって参照した諸資料の収集・検討、作画過程の追跡等を通じて、ポスターに現れた図像がどのような過程を経て作られたのかを調査する。また一方で、日本国有鉄道北海道総局による発注過程や広報戦略を調査することで、北海道の視覚的なイメージがどのような背景のもとに形成され流布していったのかを検証する。さらに同時代の北海道を巡る視覚イメージをひろく収集し対比することで、栗谷川の独自性と同時代性、また相互の影響関係を検証する。研 究 者:関西大学大学院 文学研究科 博士課程後期課程 柴 田 就 平江戸明治期を一連の流れでとらえる大坂四条派の研究は、これまでの日本美術史研究のなかで、先行研究がないのが現状であるが、日本美術史研究において極めて重要な位置を占めるものと考える。しかし、大坂画壇を否定する研究者が数多くいた傾向
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