鹿島美術研究 年報第26号
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中国山東省における南北朝時代から唐代にかけての仏教造像様式の研究―63―研 究 者:成城大学 社会イノベーション学部 教授  小 澤 正 人中国では1990年代以降中小石窟や造像碑の調査が進んだことに加え、仏教造像の出土が相次いだこともあり、全国的に仏教美術史関連資料の増加がみられる。南北朝時代から唐代にかけての資料もその例外ではなく、これにより、従来は資料的な制約から検討が難しかった、地方における仏教造像の詳細な研究が可能になってきている。しかし、資料が急激に増加したこともあり、地方様式を総合的に扱った研究は、決して多くないのが現状である。このような研究状況を踏まえ、本研究は、地方様式研究の一環として、華北東部の山東省を選び、南北朝時代から唐代にかけての仏教造像様式の解明を目的に構想されたものである。具体的な研究構想は、以下のようなものである。① 資料収集とデータベース化山東省の仏教造像に関する報告・写真などの画像資料・拓本などを収集し、効率的な利用のためにデータベース化する。② 小地域ごとの検討山東省を南北朝時代から隋唐時代の行政区画などを参考として小地域に分割し、地域ごとに仏教造像の変遷を検討する。③ 山東省における造像様式変遷の解明②における成果を総合し、山東省における造像様式の変遷を明らかにする。同時にその変化をもたらした背景について、他地域の関係などに留意して考察を行う。本研究により、これまで大枠でしか理解されていなかった、山東省における南北朝時代から唐代にかけての造像様式の具体的な変遷過程を明らかにすることができる。これにより、従来の中国仏教美術史研究では十分には論じられてこなかった、地方における造像様式の実態、さらに中央と地方の関係などを明らかにすることが期待され、そこに本研究の意義が認められるのである。

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