研究発表者の発表要旨 1.映された庭園の景―伝土佐廣周筆「四季花鳥図屏風」における“和漢混淆”― 発表者:早稲田大学 文学学術院 助手 岡 本 明 子② 2009年助成金贈呈式③ 研究発表会よるルーヴル美術館スペイン絵画室の設置が契機となってフランスに広まった、エル・グレコやベラスケスの手になるスペイン古典絵画への格別の関心といった「スペイン趣味」の現象が20世紀初頭のパリにも依然余韻を残していたことを指摘し、ピカソはもとより、モデルニスモのスペイン画家たちが、フランス人によって作り上げられたスペインのイメージが色濃く残るパリの批評界や美術市場を意識して「正統にスペイン的」なものを模索しつつ、マネから印象派までのフランス近代美術を吸収しようと努めた様子を明らかにした点は、高く評価できる。よって財団賞に値すると判断する。また、優秀者の吉澤早苗さんは、14世紀シエナ絵画に見られる都市を伴う風景表現をトポグラフィック(地誌的)な地図との関係で論じ、発展性のある研究の方途を提唱したことが注目に値する。 (文責:小佐野重利委員) 2009年助成金贈呈式は、第16回鹿島美術財団賞授賞式に引き続いて行われ、選考委員を代表して、高階秀爾・大原美術館長から、2009年1月25日開催の助成者選考委員会における選考経過について説明があった後、安富専務理事より助成金が贈呈された。 本年度の研究発表会は5月15日鹿島KIビル大会議室において第16回鹿島美術財団授賞式ならびに2009年「美術に関する調査研究」助成者への助成金贈呈式に引き続いて、財団賞受賞者とそれに次ぐ優秀者である計4名の研究者により次の要旨の発表が行われた。サントリー美術館に所蔵される「四季花鳥図屏風」は、金泥で施された霞を背景に岩と流水を配し、そこに十四種の花木と二十羽ほどの鳥、そして花の周りを飛び交う虻や蝶を描いた六曲一双の屏風である。土佐光起による極め書きによって、伝土佐廣― 16 ―
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