鹿島美術研究 年報第27号
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(2010年)― 25 ―① 美術としての縄文、その概念の確立と総合的研究② 須磨コレクションの再構成研 究 者:武蔵野美術大学大学院 造形研究科 博士後期課程  鈴 木 希 帆縄文土器の美術的普及は、日本の美術に世界の美術と同じ視点、ルネサンス以降の西洋文明のフィルターを通したモダニズムの視点を導入した前衛芸術家・岡本太郎の「縄文土器論」(1952年、みづゑ)を契機とする。しかし、考古遺物である縄文土器は、美術全集では考古学者による社会背景と土器製作技術の解説を中心に語られ、その美的価値は十分に述べられることはなかった。美術史においても日本美術の特質である工芸的性格、または呪術や祭祀との関係において語られ、未だ原始性の範疇にある。現時点では考古学と美術の隔たりから、美術史における縄文土器研究は停滞していると言わざるを得ない。そこで申請者は美術としての縄文土器研究を確立するため、まず美術、考古、文化人類学を横断する縄文土器を、美術への受容史へとまとめ、次に視覚的な分析を用い(装飾文法シンタックスを用い造形分析を行う)、美術作品としての縄文土器論を展開していく。本申請の海外調査では考古学者中谷治宇二郎がパリを中心に1930年代のヨーロッパで発表した縄文資料の美術的、民族学的受容状況、岡本の縄文の美術的発見に影響を与えたと考えられるマルセル・モースの民族学資料の調査、造形論で比較資料とし方法論を応用するギリシアのカマレス土器の調査、および海外博物館・美術館における縄文土器コレクションの形成過程を調査し、受容史と造形論を充実させたいと考えている。研 究 者:長崎県美術館 学芸員  森 園   敦須磨彌吉郎のマドリード赴任時代に集められたコレクションは1760件を数えていⅢ.2009年度「美術に関する調査研究」助成決定研究者と研究課題 研究目的の概要

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