1)浅川伯教はこれまで「韓国陶磁研究者」として高く評価されてきたが、とりわけその陶芸作品については、韓国陶磁研究の単なる方法論の一つとして語られるのみであった。つまり、伝統的な技術を調べるために自分でも製作してみた、という観点である。そのため、伯教の陶芸活動は、これまで学術的な研究主題として正面から取り上げられることはなかった。しかし伯教の著述に表れている工芸論やその実作品からは、明らかに滅びようとしている朝鮮陶芸の復興を目指していたことが読み取れるのである。そこで本研究では、いまだ本格的には検討されていない浅川伯教の実作品を調査し、器種、器形、技法などの面において、地方窯からどのような影響を受け、また一方で、地方窯をどのように指導したのかを実証的に明らかにし、伯教の作陶の意義を考察したい。2)日本の近代陶芸史において、地方の窯に積極的に関った陶芸家として、よく富― 27 ―④ 日本民芸運動の原風景建築の指定調査のための年代・様式の調査、建物の解体修理による建立当初の復原調査により、細部手法及び建築技法等の古建築の内面的価値の調査が進展し、現在では、木造建築においては世界最高域に達している。さらに大戦後、修理予算の増大により、主要な重要文化財建造物の修理は殆ど完了した。その間、棟札や銘文・墨書等が多数発見され、古建築の建立年代も確実に決定し得る資料が蓄積された。したがって、現在はこれ等の資料を整理、再検討して日本建築史を再編成しなければならない時期に達している。しかるに前記の調査研究は、復原修理の必要に応じて個々別々に行われたものであって、特に中世が取り纒められていないのが現状である。細部意匠の有する形状・手法から組織的かつ系統的に研究して、総合的に取り纒めることが研究の方針であり、現在、日本建築史上、最も重要な研究である。研 究 者:大阪市立東洋陶磁美術館 学芸員 鄭 銀 珍本調査研究は、浅川伯教自身が芸術家であり、また朝鮮半島の地方窯で伝統工芸を振興しようとした実践家であることを明らかにし、その実践が伯教独自の「民芸運動」として展開しつつあったことを論じようとするものである。それはまた、日本の民芸運動史の初期における、新たな側面を示すものでもある。この研究目的をさらに説明すれば、次のようになる。
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