― 33 ―⑩ 九州における神像彫刻の調査研究⑪ 芸文指導要綱と旧満洲国における美術の統制〔調査研究の意義〕:わが国の彫刻史研究において、神像彫刻研究の重要性は、先学によってつとに指摘されてきたところである。しかし、信仰上の理由等によって、例外的な場合をのぞき、神像が公開されることはなく仏像彫刻研究に比して、大きく立ち遅れてきた。研 究 者:熊本県立美術館 学芸課 主幹 有 木 芳 隆申請者は、平成11年以来、熊本を中心とした九州各地の神社調査、特に神像調査を組織的に実施してきた。この間に、九州内93神社、2,100点余の神像および神道美術資料を調査することができた。しかし、これらは、全体のごく一部であり、未調査神社の継続的調査が必要と考える。また、すでに蓄積されている調査資料を分析考察、公開することにより、神像彫刻研究に寄与できるものと考える。〔調査研究の構想〕:1 .調査構想:熊本県内に残る阿蘇系重要神社の調査、霧島神社等の九州内重要神社の調査、国内の博物館に収蔵されている、九州由来の神像彫刻の調査を実施する。2 .研究構想:九州の神像調査は、他地域に比して、やや先行している。九州地域の神像を、ひとつのモデルとして考察することにより、「神像彫刻の発生と展開」について新たな見解をまとめたい。また、神像の研究にあたっては、畿内政府⇔地方の神祇政策:神社制度の歴史とあわせて検討することが不可欠と考える。九州の古代中世史研究の知見を取り入れつつ考察を進める。研 究 者:徳島県立近代美術館 学芸課長 江 川 佳 秀近年、朝鮮半島や台湾における戦前期の美術活動は、韓国、台湾および日本の研究者によって急速に研究が進展している。しかしながら同じ日本の旧植民地ではあっても、中国東北部での美術活動は、現代中国の社会状況と資料の決定的な散逸が原因となって、はかばかしい成果を上げていない。これまで申請者や飯野正臣氏がそれぞれ
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