鹿島美術研究 年報第28号
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― 33 ―⑨ 琉球王国時代から現代に於ける沖縄(琉球)の芸能祭祀と紅型―紅型の衣裳と幕について―トゥディオーロ」に関する基礎関連資料(ヴァザーリと「ストゥディオーロ」の構想者ボルギーニとの往復書簡、ヴァザーリとフランチェスコ1世との往復書簡等)をフィレンツェの国立古文書館において収集し、フィレンツェ美術史研究所において、先行研究を収集し、その資料の検討、文献リストを作成する。また「ストゥディオーロ」の作品と関連する素描・版画を集め、ヴァザーリ工房の様式と個々の芸術家の様式を再検討する。特にヴァザーリ工房の北方出身の芸術家ジョヴァンニ・ストラダーノは、それまでパラッツォ・ヴェッキオの他の部屋の装飾にも参加しているが、その高い写実主義の技量を示したのはもっぱら風景画であったが、「ストゥディオーロ」では寓意・神話画にその技量を取り入れている。それゆえ「ストゥディオーロ」にはこれまでのヴァザーリ工房の芸術様式にはみられない写実主義がなされていると考えられる。このような「ストゥディオーロ」の36枚の基礎資料の作成と個々の作品の詳細な分析は、ヴァザーリ工房の芸術家に光をあてると共に、16世紀末のフィレンツェの芸術傾向を指摘し、新しい写実主義の流れを提言しうるものと考えている。そしてさらに、ブロンズィーノの作品との比較によって、ブロンズィーノのマニエラが引き継がれていることを示すことで、これまでの「ストゥディオーロ」研究に新たな様式分析を加える。その点において独創的であるといえる。研 究 者:㈶海洋博覧会記念公園管理財団 学芸員      沖縄国際大学南島文化研究所 特別研究員  兒 玉 絵里子早稲田大学大学院修士課程に在学する傍ら、東京国立博物館学芸部工芸課染織室で非常勤職員を務め、また、職人に師事して、「長板中形」等の技を学んだ経験をもとに琉球紅型の職人を志し、沖縄に参った。紅型に於ける初の国指定重要無形文化財保持者玉那覇有公氏に弟子入りし、工房勤務の後、怪我で退職、今日にいたるまでの11年間に、職場勤務の休日や勤務終了後の時間を利用して、紅型の個人研究を進めて参った。沖縄における従来の紅型研究は、沖縄県立芸術大学に所蔵される琉球王国末期〜大正期の紅型資料(鎌倉芳太郎旧蔵)の調査研究が主で、王国時代の模様を分類

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