り、戦後の前衛美術運動ではガリ版刷りの出版物などが発行された土地柄でもある。本研究は、出版文化という点からも意義ある視点となるはずだ。美術ジャーナリズムを基軸にすえた実証的な基礎研究は、あまたの作家が対象となる池袋モンパルナスを扱う際には欠かせない視点となるだろう。研 究 者:早稲田大学大学院 文学研究科 博士後期課程 四 宮 美帆子本研究は、戦国時代を中心に描かれた鷹図を取り上げた論考の一部である。鷹は古代より為政者の象徴として存在し、鷹狩りに利用され、愛玩として収集されてきた。そして愛鷹を描いた鷹図は室町時代以降、江戸時代に至るまで作例が残されている。本研究では「佐渡掾藤原正吉」の印章を持つ鷹図を取り上げて考察を行う。現在十点の作例が展覧会等で紹介されているが、室町時代から安土桃山時代の武人画家の作品として認識されている。しかし、2010年早稲田大学日本美術史研究室の調査により、「慶安元年戌子九月吉日」の紀年と「山本佐渡守藤原正吉筆」という署名のある作品が薬師寺より発見され、藤原正吉の名字と活躍年代が明らかになった。この事実をもとに現存する藤原正吉画の整理作業を行いたい。そして本作が描かれた徳川家光治世に活躍した狩野探幽や橋本長兵衛の作品を参照し、藤原正吉画を時代の流れの中に位置づけたいと考えている。また徳川家光治世に於いて、鷹や鷹図はどのような位置づけを与えられ、為政者に利用されていたのだろうか。狩野探幽や橋本長兵衛の作品の制作経緯を参考とし、鷹図が当時の幕府によって政治的・文化的に利用されているかを確認し、藤原正吉画の制作経緯を考察したい。本研究は、藤原正吉画判断の一助となると考えられ、また、徳川家光治世における幕府の文化政策の一環を知る手立てとなると考えている。研 究 者:東京大学大学院 人文社会系研究科 博士課程 佐 藤 有希子 保存状態の良好な敦煌石窟において、わけても毘沙門天像の伝存数の多さは他に類― 56 ―㉜ 藤原正吉の鷹図㉝ 敦煌の毘沙門天像に関する研究 ─晩唐〜宋時代を中心に─
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