㊼ 中世のステンドグラス《聖ヨハネ伝の窓》に関する総合的研究研 究 者:清泉女子大学 文学部 教授 高 野 禎 子㊽ 日本の文人画における詩情表現の研究 ─日中関係を中心に─2006年の夏以来、私はシャルトル大聖堂の《Baie48:聖ヨハネ伝の窓》に着目しながら、同時代の作例を調査して記録にまとめている。特に2009年以降は総カタログの制作をめざして、各地の聖堂を訪ねて資料収集に努めてきた。この成果をもとに2010年本務校の紀要に第一次のカタログとして基本事項を報告した。ただしカラー図版のないカタログは実質的にその意味をなさない。カラー図版を伴うできるだけ詳細な《聖ヨハネ伝の窓》の現状報告を試みたいと思う。本研究の目的は、フランスとイギリスのゴシック大聖堂に残る《聖ヨハネ伝の窓》の諸作例に関して、現地調査を行い、それをカラー図版と共に総カタログの形でまとめることにある。この《聖ヨハネ伝の窓》は、現在まで確認しえた限りで17の作例がある。個々の聖堂で個別の研究は存在するものの、ヨハネ伝の窓全体を視野に入れた総カタログの制作は未だなされていない。なお、ヨハネ伝の窓の研究は、それが一聖人伝としてではなく「黙示録」の著者像として描かれているという事実に注目することで大きな意義をもつ。これまでの大聖堂研究において必ずしも充分に考察されてこなかった総合的な聖堂空間のあり方を再検討するに相応しい主題である。建築、彫刻、ステンドグラス、写本、金工品と細分化された研究分野を、聖ヨハネの存在を機軸にして再統合することができればと思う。研 究 者:小林忠美術研究所 主任研究員 小 林 優 子一枚の絵の前に立って何らかの詩情を感じることは、多くの人が経験してきたことであろう。詩情の喚起は、鑑賞の深化を促し、絵の評価を高めることへとつながる。無限の可能性が広がる絵画表現のなかにあって、詩情は、ある美質の一傾向をなし、とりわけ文人画においては顕著に認められる。本研究は、この「詩情表現」について、日本の文人画の作品に即し、具体的に論ずることを目的としている。― 70 ―
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