2012年助成金贈呈式は、第19回鹿島美術財団賞授賞式に引き続いて行われ、選考委員を代表して、高階秀爾・大原美術館館長から、2012年1月13日開催の助成者選考委員会における選考経過について説明があった後、岡本専務理事より助成金が贈呈された。 本年度の研究発表会は5月11日鹿島KIビル大会議室において第19回鹿島美術財団授賞式ならびに2012年「美術に関する調査研究」助成者への助成金贈呈式に引き続いて、財団賞受賞者とそれに次ぐ優秀者である計4名の研究者により次の要旨の発表が行われた。② 2012年助成金贈呈式③ 研究発表会見をもたらした。本論文では、左廊のヴォールトにストゥッコ浮彫で表された海神《ネプトゥヌス》の着想源を従来考えられていた古代ローマ石棺浮彫に加え、レオナルドの素描《クオス・エゴ》であると論じ、レオナルド素描のタイトルがウェルギリウスの『アエネーイス』に記述されるネプトゥヌスが嵐を鎮める「クオス・エゴ」に由来すること、ウェルギリウスの「クオス・エゴ」が15世紀末以降の人文主義解釈で「善き統治者」の暗喩として知られ、16世紀を通じて君主称揚の図像に用いられていたことを指摘した。そして、ラファエッロに基づく銅版画《クオス・エゴ》や弟子たちの下絵に基づくタペストリーに表された同様の「クオス・エゴ」のネプトゥヌスを分析して、別荘のヴォールトのネプトゥヌスは、善き統治者としての教皇レオ10世を称揚する図像であったと結論づけた。説得力のある解釈であり、よって、鹿島美術財団賞に値すると判断される。一方、優秀者の平泉千枝氏は、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの「夜の絵画」に、ロレーヌ地方に浸透していた跣足カルメル会修道士の「十字架のヨハネ」の思想の反映を指摘し、ラ・トゥールの「夜の絵画」研究に新しい可能性を切り開いたことが評価される。 (文責 小佐野重利委員)
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