塔の心礎に舍利を奉安する形式が主流であった時代と考えることができる。研 究 者:カナダ・カルガリー大学 芸術学部 教授 楊 暁 捷『後三年合戦絵詞』模写本は、いまでもすこしずつ収集され、報告される段階にあるものである。一例として、2012年6月に開催された「説話文学会50周年記念大会」では、併設された古典籍展示において、主催校の立教大学が新たに購入した同模写本を始めて公表したことがあげられる。一方では、模写本の作品群自体の規模、内容、完成度や作品伝播における貢献など、模写本のあり方にかかわる基本的な課題は、あまりにも見過ごされてきたと言わざるをえない。研究者たちも、絵巻への注目を祖本にばかり注ぎ、それの存在や文化史的な価値の一端をしっかりと担ってきた模写活動、模写による周知や教育の事実に目を向けずにきた。絵巻の研究に携わる者としては、この事を反省しなければならない。模写本の価値は広い範囲に亘り、それを分析する立場も複数考えられる。本研究では、とりわけ模写本にみる祖本との距離、模写本から読む祖本への認識、模写本より得られる祖本の失われた姿の再発見などを具体的な考察の内容とする。これらのテーマを枠組みとし、諸模写本を観察、分析し、そこから得られる発見を細心の注意をもって纏める。模写本の作成は、絵巻の享受史の一部を成したものである。そのような見地から、ひろく美術の広がりの経路、一点の絵巻の名品が持つ古典の影響のあり方、そしてより具体的には『後三年合戦絵詞』にまつわる享受、注釈、読解、鑑賞など、絵巻研究に関わる諸基礎課題をこの研究を通じて問いたい。研 究 者:東京大学東洋文化研究所 訪問研究員 Rachel Saundersこれまで「十六善神図」は仏画の領域の中でのみ論じられてきた傾向があり、儀礼・宗教的な視点も欠いており、少々閉鎖的に研究されてきたと言えるだろう。本研究は、中世の「釈迦十六善神図」を再検討しながら、我々現代人が作り出した「聖」・⑤ 「後三年合戦絵詞」模本群をめぐる基礎研究⑥ 玄奘三蔵像研究 ─釈迦十六善神を中心に─
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