鹿島美術研究 年報第30号
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注⑴ 辻惟雄「狩野元信㈠〜㈤」(『美術研究』246、249、270、271、272、1967年、1970年、1971年)、山岡泰造『狩野正信・元信』(『日本美術絵画全集』七、集英社、1978年)、山本英男「狩野元信」(京都国立博物館編『室町時代の狩野派 画壇制覇への道』中央公論美術出版、1999年)(注2)、真体山水図における元信から永徳への正統的な作画学習の証左となる、香雪美術館「四季山水図」屏風右隻を据える。本作は、現在その制作年代が議論の俎上に上げられている永徳の聚光院方丈檀那の間「琴棋書画図」を考察する上でも重要な作品である。本作を中心に、父正信らの先行作品や中世において画本たる舶載画との比較から、元信周辺作を含む元信様山水図のモチーフ、構成、空間性にみる造形的特質について考察し、中世支配的であった山水図における元信様山水図の位置づけを試みるとともに、その大画面山水図の造成が如何に行われたのかを明らかにしたい。⑵ 山本英男氏解説(『特別展覧会狩野永徳』京都国立博物館、2007年)それによって導き出された大画面山水図の造成過程と、大画面花鳥図にみる造成過程とを並置することにより、両者が異なる条件を背景に造成され、さらには、大画面花鳥図の造成においてより複雑な様相を呈することを査証したい。また、山水図における元信の中世と花鳥図における元信の中世とがどのように相違するかを考察することで、大画面画造成における元信の創造性について、より多角的に理解出来るものと思われる。それによって、中世末期という時代の転換点にあって元信が如何にあったか、大画面花鳥図のみからでは見えない、中世末期の、より複雑で重層的な様相を明らかにすることが本調査研究の目的である。研 究 者:筑紫女学園大学 文学部 講師  緒 方 知 美目的:本課題「経絵様式の研究」の目的は、平安時代に盛んに制作された紺紙金字経典の見返絵である経絵に関して、以下の2点を明らかにすることである。① 経絵と絵巻の間の表現形式における共通点を明らかにする。②  仏教絵画と世俗画の中間的性格を持つものとしての経絵の絵画史的位置づけを明らかにする。意義:日本における経絵研究に画期的進展をもたらしたのは須藤弘敏氏の論文「平安㊶ 経絵様式の研究

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