か?マネ芸術に顕著な「伝統」を踏襲しつつ「モデルニテ」を導入し、引用に終始しない革新性を表出するという特徴から、マネとベラスケスの関連性について再検討する。先行研究においては、白人女性の表象のみに焦点が絞られ、黒人女性の表象に対する積極的な考察はなされていない。黒人女性の表象に対し、ベラスケスからの影響てはいるが、相互関係が具体的に指摘されてはいないという現状がある。浮世絵師がどのような作品から影響を受けていたのか、具体的な例を示すことができれば、何より、開拓の途上にある子ども絵の研究が一歩前進することになるだろう。研 究 者:千葉大学大学院 人文社会科学研究科 博士後期課程 修士論文においては、エドゥアール・マネ(1832〜1883)が《オランピア》における花束を持つ使用人を19世紀フランス社会において稀少な存在である黒人女性として描いた理由に対し、先行研究により指摘された「オリエンタリズム絵画からの引用」以外の見解を新たに提示することはできなかった。筆者は、過去の巨匠の「伝統」的作品からのモチーフの引用というマネの特徴に着目し、17世紀スペインの画家ディエゴ・ベラスケス(1599〜1660)《エマオの晩餐とキッチンメイド》が《オランピア》における黒人女性の表象の引用元となったのではないかという仮説を立てた。マネとベラスケスには、荒々しい筆致による技法とテーマの非理想化(注)等の共通点が存在し、両者の影響関係から導き出される仮説を論証することにより、オリエンタリズム絵画における虚構の非西欧とは異なる、作者の同時代の現実の西欧社会という場面設定下に描かれた黒人女性召使の表象に付与された機能に対して、具体的な考察を行うことができる。《オランピア》及び《エマオの晩餐とキッチンメイド》の比較検討により、下記二点の問題に対する仮説を導き出すことを目的とする。⑴何故白人女性でなく黒人女性が使用人として描かれたのか?⑵ 黒人女性が「同時代」の衣装を身に付け表象されることにどのような意味があるの木 田 麻 美■ 黒人女性の表象におけるエドゥアール・マネとディエゴ・ベラスケスの関連性─《オランピア》と《エマオの晩餐とキッチンメイド》の比較を中心に─
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