かけるべくドメニコ会修道士バルトロメオ・ダ・フィレンツェが中心となって作成した「意見書」(1431年)の記述をもとに探る。ここで、カラファ礼拝堂右壁面に描かれた《聖トマス・アクィナスの勝利》に目を向けるならば、本来なら聖トマスの思想の系譜と正統性を示す本主題の伝統図像に、大きな改変が加えられ、「三位一体」の教義に背いた異端者たちを非難する画面が構想されていることが明らかとなる。すなわち両壁画の関係性は、ブファリーニ礼拝堂壁画に対するフィリッピーノの芸術的関心のみに還元されるのではなく、両修道会の競合意識やベルナルディーノ列聖後30年経てもなお両修道会のなかで決着していなかったその正統性に対する見解の相違をも示していると言えるのである。
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