(2014年)研 究 者:東京国立博物館 研究員 酒 井 元 樹現在の中世金工史の研究は、仏具、装身具、飾金具、刀剣あるいは刀装具と個々の作品において研究が進み、それぞれ独自の歴史観が構築されている。近年それらを包括的に考察した研究がみられるようになり、筆者も神照寺所蔵・金銀鍍宝相華透彫華籠(国宝)の制作年代を巡る考察において仏具と仏像の装身具を比較考察し、西大寺所蔵・金銅透彫舎利容器(国宝)の考察においては、飾金具や刀装具などとの共通性を見出して新たな制作時期を提案するなど検討を進めてきた。一般的に中世の仏教関係金工品は、平安時代から鎌倉時代にかけて優品が多く、以後は次第に衰退・形式化した作品が多くなるとされ、一方、刀装・刀装具は、鎌倉時代から室町時代にかけて技巧を凝らした作品が登場し、特に南北朝時代には極度に装飾性が強い作品がみられ、室町時代には三所物が登場するなど、その歴史上重要な変化があった。先述した通り、筆者は金工品における個別的な歴史的展開に対して統一した歴史観を適応させる可能性を探っているが、そのうち刀装の歴史体系は特に漠然とした部分が多く、より正確な理解が必要である。本研究は中世の刀装を研究するものだが、その問題意識は日本刀剣史固有の事柄としてだけ捉えるのではなく、むしろ中世金工史という大きな歴史体系への理解を念頭に行うものである。研 究 者:京都市立芸術大学大学院 美術研究科 博士後期課程 本研究の目的については、研究内容の意義と価値、研究テーマの構想の大きく2つの観点から述べたい。藤 木 晶 子研究目的の概要① 中世の腰刀に関する形式的展開とその考察② 竹内栖鳳研究 ─晩年期の水墨風景画について─Ⅲ.2013年度「美術に関する調査研究」助成者と研究課題
元のページ ../index.html#42