鹿島美術研究 年報第31号
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1.大中国美術展成立の背景  故宮博物院の宝物/欧米における中国美術への関心/日本と中国2.日本参加までの道程   ディヴィッド卿の調査来日/瀧精一による抵抗/山中定次郎の活躍/團伊能とブリッジ大佐との会談/王立芸術院での大日本美術展開催の提案/昭和天皇の出品承諾/日本の正式出品/作品の輸送3.日本からの出品作品  作品リスト/出品者4.日本参加による反応  日本メディアの反応/英国メディアの反応5.結論本美術展に関する先行研究は、特に中国と英国との関係、そして出品された作品を中心に論じられることがほとんどであり、多くの場合、日本は一参加国としてしか捉えられてこなかった。唯一、Ilaria Scaglia 氏の博士論文 The Diplomacy of Display: Art and International Cooperation in the 1920s and 1930s(ニューヨーク州立大学、2011年)において、日英中の政治的問題について指摘されている。しかし、氏の論の中心は英中関係であり、本展覧会に対する日本からの視点という意味においての検討は不充分である。そこで、本研究では、ロンドンで開催された中国美術展に対する日本の思惑と立場を中心に検討し、日本の公式参加に際して、当時日本国内で何が議論され、何が問題とされたのかについて解明する。今後も日本は中国美術の優品の集積地としての役割を担い続けるだろう。近年注目をされている、日本が保有する中国美術品の所有権にまつわる諸問題に光を当てるという点においても、本研究が果たす役割は重要である。構想

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