1933)が挿絵のなかの1枚である《ソロモン王とエルサレム》を、正宗得三郎(1883〜1962)が《ネブカデネザルとダニエル》を手伝っていることを推定した。しかし資料が何も残っておらず、これまでにおいてはもちろん、筆者の分析においても、未だ具体的な証拠を挙げることができていない。よって、宗教に関する書物調査を通して、決定的な証左を挙げることを目的のひとつとして研究調査を進める。研 究 者:名古屋市博物館 学芸員 五 味 良 子本研究はエドワード・S.モースが蒐集し、ルックウッド・ポタリーを経て、現在シンシナティ美術館に所蔵される陶器コレクションの調査を通じて、アメリカにおける日本の日用陶器の影響を明らかとし、アメリカで展開したジャポニスムの特徴の要因を考察することを目的とする。ルックウッド・ポタリーは1880〜1967年の長期にわたり操業を続けた、アメリカ陶磁史上最大規模の制作者で、ロイヤル・コペンハーゲン社やセーヴル社などと並び、国際的に高い評価を得た。初期において日本風の陶器を作っており、その製品はアメリカのジャポニスムの陶磁器を代表する存在である。アメリカのジャポニスムにおいては、ボストンやカリフォルニアの諸都市における活動に注目が集まる傾向にあるが、実はルックウッドが居を構えたシンシナティは、19世紀においては全米でも有数19世紀後半から20世紀初頭に活躍したアメリカ人博物学者、エドワード・S.モースは、東京大学に在職中、古器旧物に通じた蜷川式胤に鑑定術を学び、客観的な基準にもとづき各地の陶器や生活道具を体系的に蒐集した。帰国後はアメリカ各地で日本文化を紹介する講演や著作活動を行うなど、日米間の文化的交流において大きな足跡を残した人物として知られている。モースの蒐集品は現在マサチューセッツ州セーラムのピーボディー・エセックス博物館やボストン美術館のコレクションとなっている。ほか彼のコレクションの一部は、オハイオ州シンシナティにあるシンシナティ美術館にも多数収蔵されている。これは、かつてシンシナティを拠点に活動していたルックウッド・ポタリーという美術陶磁の製陶会社がモース本人からコレクションを購入し、のちに美術館に移されたものである。⑮ アメリカにおけるエドワード・S.モースの日本陶器コレクションの影響─ルックウッド・ポタリーを例に─
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