(2) 石田尚豊「聖護院蔵 熊野曼荼羅」『日本美術史論集』中央公論美術出版、1988年/梅沢恵「湯討する手掛かりともなりうるであろう。本研究では大峯八大童子の図像を中心に据えるが、得られた考察を踏まえ、吉野・大峯に祀られていた子守明神や勝手明神、熊野曼荼羅図にあらわされる熊野九十九王子など、修験道に関わる他の尊格の図像についても継続的に研究を続けることで、より広がりを持つことが期待される。また、従来は個別に論じられることが多かった厨子絵や曼荼羅図などを、図像という観点から包括的にとらえることで多角的な視点から修験道の作例を論じることができると考える。以上のように本研究では大峯八大童子の図像に反映されている思想背景を探ることで、個々の作例の制作背景を探ることを目的にしている。従来は吉野曼荼羅図や熊野曼荼羅図などの枠組みのなかで論じられてきた作例について、大峯八大童子という諸作例をつなぐ尊格に注目する点に本研究の意義と新奇性がある。注(1) 中野照男「熊野曼荼羅図考」『東京国立博物館紀要』21、1986年3月/鈴木昭英「金峯山信仰研 究 者:ライデン大学人文学部大学院 博士課程 近 藤 貴 子調査研究の目的本研究は日英二言語領域における日本現代美術の言説を比較分析し、その二言語の狭間で不可視化する概念、及び分類体系を明らかにする。具体的には、戦後の日本現代美術の日英二言語領域における言説上の在処を考察し、戦後から現在までの「地勢図」を描くことを目的とする。調査研究の意義・価値と吉野曼荼羅」『大阪市立博物館研究紀要』第一冊、1968年3月など。泉神社所蔵熊野曼荼羅図の図様について」『東京国立博物館研究誌』581、2002年12月。21世紀に入り、グローバル化は経済、商業の分野にとどまらず、人文学研究の分野にも深く浸透しつつある。しかしながら、西洋思想に深く根付く現代美術史研究は文化本質主義から解放されることなく、間文化的研究は推奨されながらも足踏み状態が続いている。本研究では、世界美術史研究の基盤となっている西洋思想から距離を置⑲ 世界美術史形成を背景とする「日本現代美術」の在処―日英二言語領域の美術批評の比較研究―
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