品まで多様な形態の史料を分析する。この研究手法は大型の油彩・フレスコ画作品、また中型のパステルによる絵画作品の研究にも少なからず応用可能であり、近世ヨーロッパ絵画史研究のための参照史料に関する有効な利用方法を提示する点においても、本研究は価値を持つと考えられる。研究の構想:本研究では18世紀のフランスで制作されたミニアチュール作品とその作者に対する評価の様態を明らかにし、さらにそれらを比較し個々の特徴を相対化しつつ把握する。個々の評価の内容を明らかにするために、具体的には以下の研究を実施する。① 評価額に基づく分析: ゲッティー美術研究所作成の売立てカタログデータベースを利用することで18世紀のフランスで制作されたカタログに記録されているミニアチュール作品の評価額を調べ、さらにそれを他の技法による絵画作品の評価額と比べる。これによりミニアチュール作品の経済的価値に対する売り立て鑑定人の評価を相対的に明らかにする。また宮廷人による評価を明らかにするために、同様の評価額に関する分析をブルボン朝遊興雑費出納記録ならびに王立建造物局注文・購入タブローのリストをもとに実施する。② 展覧会出品作に基づく分析:当時の展覧会におけるミニアチュール作品の重要性を明らかにするため、王立絵画彫刻アカデミーと聖ルカ・アカデミーが開催した展覧会の作品出品目録を分析し、各展覧会においてミニアチュール作品の出品数が全体の出品数に対し占める割合を算定する。また批評家による評価を明らかにするため、各展覧会に出品されたミニアチュール作品が批評の中で取り上げられる割合、およびその批評文の内容を分析する。③ 現存作品に基づく分析:画家による評価を明らかにするため、18世紀のフランスで描かれた肖像画を調査し、画中においてミニアチュール作品が占める位置を分析する。① 美術アカデミー関連文書に基づく分析:芸術家組織内での評価を明らかにするため、王立絵画彫刻アカデミーの議事録を調査し、ミニアチュール制作者とその他の画家の会議出席の頻度・アカデミー内での役職の就任状況を調べ、比較する。② 画人伝の記述に基づく分析:美術関連書の著述家による評価を明らかにするた18世紀のフランスで制作されたミニアチュール作品に対する評価の研究18世紀のフランスにおけるミニアチュール作者に対する評価の研究
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