どである。この調査・分析を通してコレクションの全体像を踏まえた後、フィラデルフィア美術館のコレクションの調査を行う。フィラデルフィア美術館のスティーグリッツ・コレクションは、1944年に同館で開かれた「アメリカ人アルフレッド・スティーグリッツの歴史:スティーグリッツ・コレクションで辿る291とその後」展が、コレクション形成の契機となっている。同展はスティーグリッツの生前に行われており、またオキーフはこの企画をコレクション寄贈のテスト・ケースとして考えていたようである。ここから同館のコレクションは分割・寄贈活動の初期の事例として重要性が高いと思われるが、本件についての詳細な研究はなされていない。メトロポリタン美術館の例に見られるようにスティーグリッツ・コレクションの研究は今後進展する可能性が高く、活動最初期の事例を検証する価値は高いと考える。美術館のアーカイヴ資料などを活用して、オキーフがどのように同館のコレクションを構成していったのか明らかにする。コレクションの内容を把握した後、同館のスティーグリッツ・コレクションにあるオキーフの作品5点とコレクションの作品31点との関連について検討を行う。オキーフはスティーグリッツ・コレクションの一部として自作品を遺贈しており、コレクション内の他の作家の作品と自らの作品とに何らかの関連づけを行っていたと想定され、両者の関連を見出すことで作品の新たな解釈につながる可能性がある。図像的・主題的な影響関係の考察はもちろんのこと、コレクションの性質および自作品の位置づけを検討したり、オキーフがコレクションの他の作品をどのように理解していたのかなど受容史的なアプローチも試みる。意義・価値 本研究は、これまで等閑視されてきたスティーグリッツ・コレクションに着目し、コレクションを軸にオキーフの創作に迫ろうという試みである。創作の源泉を見出し、新たな作品解釈をなしうるという意味において、また新しい研究の視点をオキーフ研究にもたらしうるという意味において、本研究は意義のあるものと思われる。さらに本研究はフィラデルフィア美術館のコレクションを形成期から調査し、一連の分割・寄贈活動におけるオキーフの役割や寄贈方針の一端を明らかにすることも目的としている。これはコレクション形成の中心人物に関する考察であり、今後進展が見込まれるスティーグリッツ・コレクションの研究にも少なからず貢献することができる
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