鹿島美術研究 年報第33号
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①新潟の絵師五十嵐浚明―その活動と評価―(2016年)研究者:新潟市歴史博物館学芸員本研究は、新潟出身の絵師五十嵐浚明(1700~81)がいかにして法眼叙任を受け、なぜ新潟在住にして勅命で画を献上する機会や絵師番付・評伝に名が挙がるなどの評価を得ることができたのか明らかにすることを目的とする。そこで、現存作品を中心に浚明の制作活動を把握して受注状況あるいは作品の移動を確認し、文献資料にもあたって交友関係含めその人脈を調べる。なお、できる限り作品を網羅して画像と情報を収集し、作品図録を刊行して浚明研究の基礎資料にするとともに作品の保存と新たな作品の発見を促す。以上の本研究の意義として、第一に、新潟における美術史および制作環境・美術市場といった当時の社会の一端を明らかにすることができるだろう。また浚明は新潟在住でありながら上方で評価を受けた存在であるため、第二として、江戸中期以降の中央画壇(とくに京都画壇)における評価史上に一例を提示することができる。一方で、都市と地方の絵師との関係(発注のシステムや物流など)についても示唆を与えられると考える。本研究は五十嵐浚明の研究において、現時点での基礎資料を作成し、浚明に対する評価史の一考察を試みる、研究の初期段階を担うものである。これによって、新潟はもちろんのこと関西地域でも五十嵐浚明の存在が認識され、さらなる資料の収集が進み、多角的な考察が可能になることを期待する。最終的には、近世絵画史上における五十嵐浚明の位置づけを行いたいと考えている。―27―中村里那Ⅲ.2015年度「美術に関する調査研究」助成者と研究課題 研究目的の概要

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