―1520年代のコレッジョ絵画との関わりから―現在の越美術史理想提案パルマ大聖堂の天井画における観者の視覚経験図:研究構想図西洋中心美術観、一国に閉ざされた歴史観影響/受容関係への過度な重視イメージとテクスト双方からの影響の確認日本や中国の美術の近代化との比較より立体的、実証的、跨国的なベトナム美術史へ東アジアの文化の共生への貢献東アジアからの視点の導入通時性と共時性の双方からの分析他の植民地芸術との比較前近代の「美術的なるもの」の確認と「工」の領域へのめくばせ意義本研究は、西洋的なヘゲモニーによって展開されてきた従来の美術研究を批判的に乗り越え、東アジアにおけるトランスナショナルな領域へと切り拓く可能性を持つ。20世紀初頭の東西美術交渉に関する実証研究として学問的意義を持つ研究であると同時に、共生を志向する東アジア文化の将来像に新しい視座を提供することができる。研究者:名古屋大学大学院文学研究科博士研究員本研究が含まれる研究の構想は、成熟期から晩年に当たる1520-30年代のコレッジョの芸術展開について、作品の主題の意味内容、造形表現、設置される宗教空間とその典礼的機能を密接に関係づけながら観者の視覚経験を導くことで、人間と神とを結ぶヴィジョンを成り立たせた画家の総合的な構想と造形表現を考察し、この時期に彼が探求していた新たな絵画のパラダイムを明確に浮かび上がらせようとするものである。パルマ大聖堂の天井画(1526-30年)を主な対象とする本研究は、その作業の一環であり、今後の考察の基礎となるものである。従来のコレッジョに関する研究は、様式論、図像解釈、礼拝・典礼上の機能、建築空間との結びつき、宗教的・文化的背景などの多種多様な論点を別個に取り上げてきたが、それらを関連付けながら作品分析を行ったシュタインハルト=ヒルシュ(2008―61―百合草真理子
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