鹿島美術研究 年報第33号
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国内外への波及近年では、2001年に姫路市立美術館ほかで「近代の京都画壇グリフィス&パトリシア・ウェイコレクション」展で海外コレクターが収集した京都画壇の作品が展示されたほか、2013年にジョン・ショスタックによる研究書『Painting Circles:Tsuchida Bakusen and Nihonga Collectives in Early Twentieth Century Japan』が出版されるなど、海外でも国画創作協会をはじめとする京都画壇に注目が集まっている。海外研究者とも交流を持ち、国内外へ情報を発信することで、国内外での京都画壇研究が活性化すると期待される。構想①国画創作協会の基礎的研究まず、晩花に関する館蔵資料の全容について解説。調査データや文字資料の翻刻を資料として紹介する。加えて、館蔵資料の調査や、文献資料調査から判明した新事実についての論考も行う。②国画創作協会会員に影響を与えた絵画理論についての考察国画創作協会に関連する美学者などの周辺人物を洗い出し、各人物に関する事項や著述文献を整理する。その中から、松本亦太郎が著書『現代の日本画』(大正4年)の中で提唱した「田園趣味」や、園頼三が大正8年12月の『中央美術』誌上で展開した「怪奇美(Grotesque)」など、国画創作協会で展開された主題や作風に関連する重要なトピックについて考察する。当時の日本にもたらされた西洋思潮など、美学者らが提唱した絵画理論の着想源の解明などを試みる。③国画創作協会とその周辺状況についての考察上記の考察を経て、大正期の国画創作協会とその周辺について考察する。国画創作協会の創立会員の5人を中心にして、当時の絵画理論がどのように作品に反映されたかを、綿密な作品調査によって実証する。④京都画壇についての総括、同時代の東京画壇との比較以上を総合し、筆者が修士論文から継続してきた谷口香嶠の研究や、明治期の京都画壇に関する研究も踏まえて、近代京都画壇の一様相を提示する。さらに、東京画壇、特に国画創作協会と同じ在野の美術団体である日本美術院の状況との比較を行い、近代日本美術史を再考する。―70―

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