1860年代におけるエドゥアール・マネの受容研究 ―サロン出品作とその批評―を1980年代から90年代に決定したのは、これらのアマチュアたちの活動の後である。本プロジェクトは、日本の凧文化の保存と伝達のために行われてきた以上のようなアマチュアと政府の活動をさらに推進するものである。現在まで、和凧文化について掘り下げられた研究が行われてこなかった。このテーマについて書かれた論文はすべて愛好家の手によるものである。確かにその中には重要な仕事も含まれているが、去年から今年にかけて行ったフィールド・ワークの結果、それらの論文には多くの誤りがあることが明らかになった。彼らは客観的な事実ではなく、主観的なイメージを語っている。そこで4か所の公立博物館と協力して、現在、実際に伝統的な和凧の「芸術化」と「国家遺産化」がどのように進められているかを調査し、日本の凧文化の保存と伝達を支援するためにさらにどのような措置をとるべきか検討する。現在、和凧文化をテーマにしている研究者はいないが、様々な分野の研究者との共同研究も可能である。京都市・パリ市友情盟約60周年を迎える2018年に、日本人研究者とフランス人研究者による国際シンポジウムを計画している。また、これまでの研究の結果を一冊の本にまとめたい。現在まだ西洋では和凧がよく知られていないので、高い品質の図版を掲載して、可能な限り幅広い人々の興味を引く必要があるだろう。こうしてこの本が公刊されれば、日本や西洋の博物館、美術館が所蔵する和凧コレクションの再評価に貢献するであろう。研 究 者:東京大学大学院 総合文化研究科 博士後期課程 井 口 俊本研究の目的は、エドゥアール・マネが1860年代のサロンに発表した全ての作品の同時代受容の問題を、美術批評、サロン戯画の読解を通じて再検討することで、現在の鑑賞者とは異なる視点からマネ作品の特質を明らかにすることにある。マネが画家としてデビューしたのは1861年のことで、彼はそれ以来ずっと、サロンでの展示とそこでの成功を目指していた。しかしながら、当時のサロンでは未だアカデミックな規範を遵守した作品が高い評価を獲得しており、その枠組みとは異なる形で線描や彩色を行うマネの作品が広く認められることは難しかった。特に《草上の昼食》(1863年発表)と《オランピア》(1865年発表)に対する風当たりは強く、それぞれの作品を巡って大きな騒動が起こっている。マネの代表作と呼ぶに相応しいこれら― 91 ―
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