大髙保二郎委員の選考理由説明② 2016年度助成金贈呈式財団賞授賞式では、選考委員を代表して大髙保二郎委員から受賞者の発表と選考理由の説明があった後、岡本専務理事から受賞者に賞状と副賞50万円が授与された。2016年度助成金贈呈式では、選考委員を代表して高階秀爾委員から、2016年1月22日開催の助成者選考委員会における選考経過について説明があった後、岡本専務理事より助成金が贈呈され、助成者を代表して百合草真理子氏(名古屋大学大学院文学研究科博士研究員)より挨拶があった。「高橋源吉の研究」は、我が国初の本格的な洋画団体である「明治美術会」の創立会員として、また、父・高橋由一の協力者として洋画界のために尽力してきた高橋源吉の業績や位置付けを彼の絵画作品や執筆した文章から明らかにしたものです。これまで著名な父の影にあって看過されがちであった源吉に光をあて、中央画壇とは異なる“もう1つ”の姿を明らかにしたことは高く評価され、財団賞にふさわしいと判断されました。「セビーリャ、サンタ・カリダード聖堂研究―ムリーリョの『七つの慈悲の業』連作をめぐって―」は、ムリーリョの「慈悲の業」連作初期6点が、対抗宗教改革期において特別な教化を担っていたことを明らかにし、独創的な解釈を導き出しました。具体的には、聖書の記述との対比に加え、聖フアン・デ・アビラの説教の中で言及される聖餐イコール至高の慈悲の業を根拠として、この連作は「聖餐の秘蹟」と重層的に結びつけられ、それらの実践による救済の道をカリダード兄弟会に対し視覚的に提示したものであると結論づけました。一部課題を残しつつもその独創性により財団賞に相応しいと判断されました。― 28 ―
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