⑧ 蓮華王院宝蔵絵巻の研究 ―「八幡縁起絵巻」「地獄草紙」を中心に―してまとめた『女性のカット』などを調査する。また、下絵・スケッチ的なものや年賀状なども調査し、彼が記号をどのようにイラストレーションに用いていたのか総合的に考察する。同時に、他の美術館、資料館、文学館に依頼し、大正時代に活躍した他の作家の作品調査も進める予定である。竹久夢二や山六郎、小林かいちなど、モティーフに共有する感覚を見出していきたい。山名文夫は没後も根強い人気があり、全国規模での大型展覧会が待望される作家である。このような作業を進めることで、今後そのような展覧会準備の進展にも寄与することになると考えられる。また、他の作家の作品を組み合わせて、時代性を見極めるような展覧会の構想にも繋げて行きたい。研 究 者:神戸大学大学院 人文学研究科 博士課程後期課程 田 中 水 萌本研究では後白河院が蓮華王院に収蔵したとされる絵巻物群のうち、「八幡宮縁起」と「六道絵」について、具体的な作品調査、文献調査、関連作品や他作品との比較を通してそれらの作品の成立、受容、展開を明らかにすることを目的とする。研究全体の構想として、修士論文から継続する八幡縁起絵巻諸本の調査に、地獄草紙諸本を加えて主な研究対象とし、先行研究を踏まえたうえで、先行研究において見落とされていた点を補完し、不明であった詞書、図像の典拠を示し、後世への影響を指摘することで日本美術史上における作品の位置づけを改めて考察する。具体的には研究は3つの構成を予定しており、一つは八幡縁起絵巻諸本について、一つは「地獄草紙断簡」及び「辟邪絵」を中心にした地獄草紙諸本について、最後に蓮華王院宝蔵絵巻が後世の絵巻作品に及ぼした影響についてである。蓮華王院宝蔵の「八幡宮縁起」は詞書のみ残り絵巻自体は現存しないが、現在「八幡縁起絵巻」と称される諸本を概観し、その成立と受容を明らかにすることで、宝蔵「八幡宮縁起」から現存諸本に図像的な継承があるのかを考察し、「八幡宮縁起」についての解釈を深める。「六道絵」については先行研究から現存絵巻の地獄草紙諸本のうち旧安住院本(東京国立博物館)、旧原家本(奈良国立博物館)、益田家旧蔵「沙門地獄草紙」(諸家分蔵)が地獄道に比定され、旧曹源寺本「餓鬼草紙」(京都国立博物館)と旧河本家本「餓鬼草紙」(東京国立博物館)が餓鬼道に、病草紙諸本が人道に― 44 ―
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