⑳ 紅型衣裳の編年に関する基礎的研究 ―海外調査を視野にいれて―することはなかった。ただし日本では近代以降、銀彩はやはり一装飾技法として、京焼の陶工を中心に引き継がれて今日に至っている。本研究の価値本研究は、中国陶磁研究を専門にする筆者の立場から、日本陶磁の特質について解明を試みるものである。管見の限り、中国陶磁にみられる金彩についてとりあげた先行研究はあるものの、なぜ日本陶磁(京焼)にのみ銀彩が積極的に施されるのか、という問題については、これまでほとんどふれられてきていない。本研究の構想筆者は、日本の陶磁器にみる銀彩は、金彩が施された中国陶磁の受容とはまったく別の背景にその根拠を求めることができ、そこに日本陶磁、ひいては日本固有の美意識として、その特異性を見いだすことができるという推論をもとに、本研究ではまず、仁清およびその周辺に位置づけられる京焼作品の調査を行い、陶磁器に認められる銀彩の技法を分析する。そして次に漆器や染織品、さらに屏風、襖など絵画作品における銀彩との比較検討を行い、最後に17世紀の日本(京都)という時代にみる日本陶磁の銀彩の特異性、またその意義について美術史学的な試論を加えることが目的である。研 究 者:大妻女子大学 家政学部 専任講師 須 藤 良 子調査研究の目的本研究は琉球(沖縄)の染め物である紅型衣裳に関する研究で、収集時期が判明している作品を中心に調査し、その文様、仕立て、素材などを検討し制作年代と衣裳の着用者層の特定を試みることが目的である。調査研究の意義筆者は紅型研究で2013年3月に学位を取得した。色鮮やかで南国らしい色調の紅型の着物は人々に人気があり、紅型についての書物は多く発行されている。しかし学術的に紅型の制作年代や着用者層、歴史的背景、美術史的な位置づけなどについて論じる網羅的な研究はこれまでなかった。筆者は博士論文で、紅型に関する多くの論述が戦後鎌倉芳太郎によるものであり、ほとんどの研究者が鎌倉の研究を継承し、新説や― 61 ―
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