10世紀レオンの聖書研究―920年と960年の聖書写本比較―らした功績があるものの、現在、その画業について語られる機会は非常に少ない。彼らはいずれも大阪の新聞社で働いていたが、『大阪パック』の創刊に携わったとされている。しかしながら、近年、歴史ある漫画雑誌として『大阪パック』への注目度が高まっている一方、同誌と洋画家との関係性は十分に明らかにされてはいない。まだ実態が不明な点が多いが、『大阪パック』は赤松、広瀬、宇和川以外にも多くの洋画家を挿絵画家として抱えており、洋画家の揮ごう会を開催するなど、その活動を支えていたこともわかっている。本研究においては、洋画家たちが『大阪パック』の紙面づくりにどのようにかかわったかということと、油彩画制作という本来の活動に対して大阪パック社がどのような影響をもっていたのか、という双方向からの検証を行う。本研究がめざすところは、第一に、これまであまり調査がなされてこなかった明治から大正期の大阪の洋画家に光を当て、歴史に埋もれていた名前や活動を明らかにすることで、今後の大阪の洋画研究の基盤を作ることである。第二に、『大阪パック』という特徴的な媒体と洋画家のかかわりを検証することで、大阪の洋画家たちの特徴的な、そして生き生きとした活動を明らかにすることである。以上により、大阪の洋画の歴史をたどる上で欠落していた時代の活動を明らかにし、大阪の洋画史を新たな視点でとらえることをめざす。研究者:共立女子大学非常勤講師今回の調査では、イベリア半島北部レオンの大聖堂に所蔵されている(Cod.6)『920年聖書』、同レオンのサン・イシドーロ参事会聖堂所蔵(Cod.2)の『960年聖書』の二写本を比較検討し、それぞれの特徴をより明確にすることを目的としている。とくに『920年聖書』の美術史的研究はいまだ数少なく、先行する作例の少なさから、図像の分析もあまり多くはなされていない。筆者はそのうち、研究の俎上に挙げられることが少ない、福音書の共通箇所を一覧にした「対観表」の装飾を中心に検討を行う。「対観表」は『920年聖書』では13ページ(ff.149v-154v)、『960年聖書』では17ページ(ff.396v-404v)にわたる。その上部には多彩な表現で福音書記者像が描―103―毛塚実江子
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